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  • ★寄席・協会の関係★(其の一 顔付け) ~社団法人 落語芸術協会事務局長 田澤 祐一~

更新日2007年8月21日

寄席と協会は言わば共存の関係にあり、金銭面も折半ならば責任も半々と言うわけで、その最たるものが顔付け(番組)ではないでしょうか。この顔付けがつまらない番組ではお客様が来ないこともあるし作る以上責任重大です。 先ずは、主任(トリ)を決める場合は席亭側の意見と協会側の希望も取り入れ決めており、主任を先に決めて後日顔付けを行うのが通例で主任が誰になるかで番組内容もかなり異なるからです。主任によってその一門(弟子・兄弟弟子)の数も違うし、若手が取れば師匠の出演も当然願う訳で主任決めが一番大切なんです。例を挙げれば弟子が多い師匠は弟子の寄席出演機会を確保するために主任を取ったりもする。但しその場合出来るだけ弟子を入れてあげたいが弟子数によっては全員出せる保障はないので気を使うところです。
寄席に出られる落語家の数は末広亭が昼席12本・夜席11本、浅草演芸ホールが昼席12本・夜席11本、池袋演芸場が昼席・夜席共8本と狭き門なのであります。当会は出来るかぎり少しでも寄席に出演させるために浅草演芸ホール・池袋演芸場は通常10日興行を5日ごとに分けて顔付けを行っているのもその為なのです。(上野広小路亭は昼席のみ9本で15日を5日ずつ顔付け)弟子の数に限らず、一門によっては弟子の落語が皆師匠に似ている(師匠の話が好きで弟子になっているから当たり前と言えば当たり前だが)番組作成上少し困ることがあるのも事実で、似たものばかりで色が変わらないのです。

寄席とは寄せる(これは聞いた話なので確証はありませんが)意味でいろいろな方が出演する所だそうで、同じような芸質(落語)が続かない方が良いのではないか?その逆に良いものは続いてもと意見の分かれるところですね。但し落語2本に色物さん1本を間に挟み番組を作るので極端に同じ話が続くことはないのですが、やはり少し考えてしまいますね。そして余り自分の感性と独自な思案だけで顔付けをしてもまずいですね。(話はそれますが、私は落語の評論をあまりしません、なぜなら人に依り感覚・感性などが違うので、私が良いと思ってもそうじゃない方もいるし、その逆もあるからです。但し本当に良いと思うものはハッキリ言いますが。) 話を戻しますが、前記に師匠が弟子の為に主任を取ることを述べましたが、それがすべてでは無くやはり自分の芸を磨くことも当然考えて主任を取っている。中には弟子をライバルと考えていて、あまり自分の出番の前に弟子が入ることを良しとしない師匠もいる。(個人商売なので一門や弟子でもこのように考えることもある。)このようにいろいろなパターンがあるので難しいんです。例えばA師匠とB師匠は芸風が似てるから出番を離そうとか、C師匠とD師匠は仲が悪いから近くの出番はいかがなものなのかとか考え出したらきりがないし、こちら側の都合ばかりでは、大切なお客様に申し訳がない。そもそも興行の顔付けは、お客様に来て頂いて楽しんでもらう為に、出番の構成を考えて作るのが正しい訳で、そこに余り私情を入れてはいけませんね。今日までどのくらいの顔付けをしたか数えられないですが、一度としてまったく同じ組み合わせの顔付けは無いはずで、無限大に近い組み合わせが存在すると考えると顔付けとは不思議なものです。そしてその時どきの最高と思える番組を作る努力を今後も続けることが大切ですね。今回は顔付けのほんの一部の話でしたが、少しだけ理解して頂けましたか? 次回は代演をテーマにしたいと思います。

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